あさぎり町中部ふるさと会

あさぎり町中部ふるさと会とは
熊本県球磨郡あさぎり町出身者、及び あさぎり町と
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2018年7月14日

続 ふるさと探訪18 昔懐かしふるさとの味: ダゴ汁・ダシゴ・田楽

4.「ダゴ汁」と「つぼん汁」
図4は、「ダゴ汁」と「つぼん汁」である。見た目にはよく似ていて、左の「ダゴ汁」には「ダゴ」が入っている。薄っぺらなものが見えているが、これは小麦粉を水で溶き、練って薄く延ばしたものである。いずれも人吉・球磨地方の郷土料理であるが、年配の方にとっては「ダゴ汁」方が懐かしいかも知れない。それは食べ物がなかった戦中戦後の食糧難時代に食べた、いや、食べさせられたものだからである。
 「つぼん汁」は、今から15年ほど前から、人吉球磨地方の郷土料理を生徒にも知ってもらおうと小学校で調理実習となったものである。そんな理由から「つぼん汁」は比較的若い人のふるさとの味となっている。あさぎり町出身で、新潟在住の由美さんもその一人で、この「壷ん汁」が懐かしいという便
りをいただいた。この「つぼん汁」の「つぼん」の意味は、「壷の」の意味で、蓋のある椀のことだそうである。人吉球磨地方では、「の」を「ん」発音することば沢山あることを以前の「ふるさと探訪」でも紹介した。「五木の子守歌」・♪よかきもん、、の「ん」は「の」だから「きもの」となる。この「つぼん」の「ん」もその例で、この地方の食べ物であることに証明している。
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図4 「ダゴ汁」(左)と「つぼん汁」(右)
 筆者は帰省のたびに、球磨地方の「味噌汁」は具だくさんだなあ!といつも思っていたが、そのルーツは、「つぼん汁」や「ダゴ汁」にあるのだろうか、いや、その逆だろうか。具だくさん の背景には、米や麦などの穀類や動物性たんぱく質が十分でなかった時代、根菜類で胃袋を満たしていた頃の名残りであろう。

5.「ダシゴ」
 煮物には必ず「ダシ」が必要である。今は化学調味料があるが、昔はすべて自然界のものであった。先に述べた熊本の郷土料理「ダゴ汁」のダシも、このダシゴと昆布でとれば最高である。西日本では「煮干し」のことを「いりこ」と呼ぶが、人吉球磨地方では「ダシゴ」と言っていた。ダシゴは海でとれたら直ちに茹で、乾燥させて出来上がりだが、原料となるカタクチイワシの「片口」とは、下あごが小さく、上あごが前方に突き出ているので、上あごだけの口しかないように見えるところきている。この小魚は、鮮度が落ちるのが早いため、漁獲からどれだけ素早く加工できるか否かで形と品質が左右される。カタクチイワシは大きい順に「大羽(オオバ)」、「中羽(チュウバ)」、「小羽(コバ)」、「カエリ」、「チリメン(シラス)」の5種類に分かれ、大羽〜カエリまでが「いりこ」と呼ばれている。サイズでいうと、6〜8センチ位のものが煮干しのダシゴ(いりこ」になり、1センチ位の一番小さいのが「ちりめんじゃこ」または、「しらす」である。
 香川県の讃岐うどんでは、その濃厚な出汁に「いりこ:ダシゴ」が欠かせないが、球磨郡でも味噌汁のだしに、この「ダシゴ」が必ず入っていた。本稿では、この煮干しを「ダシゴ」として図5に示す。
 夏になると、必ず、ダシゴ売りのおじさんが自転車でやってきていた。人吉球磨地方は海や漁港からも遠いのに、この「ダシゴ」はどこから来るのかと思っていた。それが近年というより、八代海、謎の海丘群(ふるさと探訪:第2回不知火海の謎」を調べているとき、葦北郡の田浦町の対岸が上天草島の龍ケ岳町で、そこにダ シゴの水揚げ漁港があり、文久3年から続く水産物加工所(北垣水産)があることがわかった。佐敷の港まで目と鼻の先であり、佐敷から球磨村までも目睫の間(もくしょうのかん)である。奥球磨あたりまで行商があっても不思議はなかったのである。
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図5 「ダシゴ」の例と柔らかい「たつくり」(右端)
 さて、本筋に戻ろう。その「ダシゴ」のどんな思い出かというと、味噌汁の中に入っていた「ダシゴ」だけは、どうしても嫌だった。有名な料理研究家の方の煮干し(ダイゴ)を使った味噌汁の作り方では、ダシゴの頭と腸(はらわた)は取り除き、出し汁を作るのだそうである。母は、そんな勿体ないことはしなかった。出し殻も味噌汁の中に残していた。それを、母親に食べるように言われても、ダシの出てしまったダシゴは喉を通らなかった。食べたふりして土間に落とすと、猫がいつも証拠を隠滅してくれていた。あるとき、それも見つかってしまい、猫も食事時の入室は禁止となった。このダシゴはまずくて食べれなかったというのは筆者だけではなく、水俣出身の小島さんもそうだったと相槌を打っていただいた。
 先述の天草龍ケ岳町の北垣水産のHPを見ていたら、面白い記事を見つけた。それは図5で、左はウイキペディアの写真であり、右は北垣水産のダシゴ:イリコであるが、ここのダシゴは「へ」の字に曲がっている。ダシゴの良し悪しの見分け方の一つは、お腹が裂けていなくて、「へ」の字に曲がっているのが最高とのことである。ただし、味にはほとんど差はないそうである。
 
 味噌汁のダシゴがまずいと書いたが、乾物としてのダシゴはおいしい。もっとおいしいのが「たつくり」である。「たつくり」は「田作」と書き、別名は、「ごまめ」ともいうそうである。「田作:たつくり」は、カタクチイワシの幼魚の乾燥品を醤油、砂糖、みりんなどで甘辛く調理したもので、正月のおせち料理として欠かせないものの一つである。「田作:たつくり」という名称の由来は、語源由来辞典によると、イワシが豊漁のとき、田の肥料にしたら米が豊作となったのが始まりとされ、田植え肴(さかな)として食べ、豊作を祈願したことに由来している。
 島根県松江市在住の萩田さんからのメールでは、「たつくり」のことを、山陰地方では「からんま」と言うそうで、硬くなく、歯の弱い老人でも食べられる柔らかい「からんま:たつくり」の作り方を教えていただいた。それは、ダシゴをフライパンで乾煎りして、さっと湯通ししたものを甘辛く煮付けるだけだそうである。湯通しすることで、柔らかい「からんま:たつくり」になるそうである。図5の右端は我が家の試作品である。

6.田楽(でんがく)
 あさぎり町出身で関西在住の英宣さんから、囲炉裏であぶって食べた田楽(でんがく)が懐かしいという便りをいただいた。筆者も、昔、囲炉裏があったころ、四角に切った豆腐に自家製の味噌を塗り、囲炉裏の灰に刺しあぶって焼いてくれた祖母の記憶がある。
 田楽(でんがく)とは、図6に示す如く、豆腐、サトイモ、こんにゃくなどに調味みそをつけて焼いた料理のことで、味噌田楽は、豆腐やこんにゃく、茄子や里芋などを串に刺し、砂糖や味醂を配合し柚子や木の芽などで香りをつけた味噌を塗りつけて、焼いたものである。熊本県では阿蘇地方の郷土料理でもある。
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図6 囲炉裏端の味噌田楽(でんがく)
(写真 左:Wikipedia、中:北垣水産)
 もともと豆腐は日本にはなかったもので、平安時代末期に中国より豆腐が伝
来し、長方形に切った豆腐を串刺しにして焼いた料理が、室町時代になると味噌が調味料として使われるようになり、今から500年ぐらい前の永禄年間には
焼いた豆腐に味噌をつけた料理が流行した。その「田楽」という名前の由来であ
るが、白い豆腐を串にさした形が、田植えの時に田の神に豊作を祈願する田楽舞の白い袴(はかま)をはき一本足の竹馬に乗って踊る田楽法師(図6右端)に似ている「田楽」の名になったということである。
つづく:次回は、酢だこ、からし蓮根、冷凍クジラ)

杉下潤二junji@siren.ocn.ne.jp


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